全国展開している大きな企業の役員の方が亡くなった際には、社葬といって会社としてお葬式や告別式を執り行うことがあります。昨今では大規模な企業にかぎらず、中小企業や小規模のベンチャー企業でも、会社をあげて葬儀を行うことも珍しくありません。
会社として従業員の方や元従業員の方が亡くなったという事実を重く受け止めることは、すなわち社員を大切に考えている企業だということです。人を大切にする企業は優良企業と言えます。日本で社葬を重要視して行う企業が多くなってきたことは、日本社会で働く多くの人々にとって良い傾向と言えるでしょう。
葬儀は単純に儀式として行うためのものではなく、参列者同士の交流も大切です。故人の死をきっかけに親睦が深まるという事実もあり、文化的なイベントとして大変意味のあるイベントだと言えるでしょう。
生活スタイルが様々に多様化している現代では、家や家族のあり方も様々です。かつては、人は自宅で亡くなることが普通でしたが、今の現代社会では、都市部のおよそ9割の人が病院や施設で最期の時迎えています。祖父母や両親の面倒を見るのは、子の役目だという考え方も根強くありますが、一方でそれが困難なことも多くなっていいます。
また、高齢になった人は、子や孫に面倒や負担をかけたくないと考える傾向が強いようです。このため人が亡くなった際の葬儀では、その生活スタイルや生活の状況が反映されることが多くあります。小規模な葬儀や直葬が増加しているのは、この迷惑をかけたくないという旅立つ側の遺族に対する配慮によるところが少なくありません。
しかし、だからといって残される側に悲しみがないということではないようです。小規模な葬儀や簡易な形態のものは、悲しみが薄いなどと考えられてしまいますが、現在では、形式にとらわれることなく、故人を偲び、悼みたいと考えている家族に支持されています。
かつては納棺する場合、亡くなった故人には、いわゆる旅立ちの衣装である白い和服を着てもらうというのが主流でした。その白い和服で故人を送り出す人は、今でももちろんいます。しかし、現在では、仏式でもこの旅立ちの衣装にとらわれることなく、故人の人柄を思わせる服装や衣装を着せることが多くなっています。
葬儀業者が簡易なタイプの白い和服を用意することもあるようですが、棺に入れるだけで着せない遺族も増えてきています。提供されるからといって、無理に棺に入れる必要はありません。また、神式やキリスト教式においては、もともと衣装に決まりごとはありません。
納棺を葬儀社に任せてしまう人も少なくないようですが、遺族はできる限り積極的に手伝ったほうが良いそうです。これは、故人が旅立ったことを認識し、遺族が悲しみを癒すひとつの過程となり得ると考えられているためです。